実習で肥えて医者に注意された話

※制限時間40分でブログを書いています。

 

ちょっとしたメンテナンスの為に二か月に一度ぐらいの頻度で通院している。

朝、予約の取れる一番早い時間帯で受診して二か月間の生活がどうであったかを血液検査の数値から定期的に見ているので、私はめったに体調不良にはならない。(体調不良を訴える際は9割仮病である)

今日もその採血の日で、ときどき気が滅入ったり躁チックになったりするものの最近はすこぶる調子がいいので、検査には自信をもってのぞんだ

毎日ランニングもしているし、最近は短距離走も取り入れて、毎日入浴している。雨の日にも人通りがなさすぎて笑ってしまうような薄暗い早朝の札幌を上機嫌で駆けずり回り、いい歳こいた大人が膝小僧を出して日中過ごしているので、このコロナ禍において知人には日焼けを指摘されるようなわんぱくぶりを発揮している。

そんな夏休みの少年を彷彿とさせる正味高卒ニートの私は、待合の椅子で待機する時間すらもじれったく感じるほどに元気だったので、腕に針を刺された際の血の出方も勢いが良く、あっという間に試験管3本分を提供することができた。

 

さて、採血の結果が出るまでは医者の診察室前の待合で1時間強の待機時間となるのだが、この時間は何時呼ばれるか分からないので外に出ようにも出られない気がして、毎回読書をして待つことにしている。今日は、「冗長性から見た情報技術」*1というブルーバックスの本を持ってきたので、サインコサインのありがたみを感じながら、現代の情報化社会を支える科学技術の気持ち程度の理屈の部分を堪能していた。

 

残すところあと1章というところでスピーカーから私の名前がアナウンスされた。

気が付いたら2時間近く待っていた。本を持ってきて本当に良かったと思いながら、本をしまいつつ、指定された診察室に向かう。コロナ対策で開けっ放しの扉から、おはようございますと挨拶をして入室し、用意された丸椅子に腰かける。相変わらず太ってる不愛想なお医者様から渡された血液検査の結果は、どの数値も基準値内、つまりすこぶる健康であることを示すものであった。

数値もいいので、お医者様からの問診も「別に問題なさそうだよね」という感じになる。便りの無いのは良い便りの派生表現で、医者の適当な問答は健康の象徴と、多少韻を踏んだつもりの句を考えてみたが、前半の語呂の悪さがネックで流行らないだろうななどと余計なことを気にしていた。毎度お決まりの流れで体重を聞かれた。毎度お約束の流れなのに今日も測り忘れてきたので、診察室の外にある体重計へ向かう。

体重計の前では看護師さんが二人談笑していて、ダックイン*2しようにも厳しい絶妙な距離感の隙間の先に体重計のデジタル表示盤がみえる。気づいてどいてくれるかしらと10秒ほど待ってみたが、かなしいかな二人の距離がぐっと縮まって声のボリュームが盛り上がり始めてしまった。悪くないのに「すみません」と謝って、そそくさと靴を脱いで体重計にのった。

 

68.3

 

目を疑うような数値が出た。2か月前から3㎏の増量。

58.3の間違いではないか。単位がkgでないのかも。色々とこの数値に関して思うところはあったが、医者が待っているので体重が印刷されたレシートをもって診察室に戻る。

レシートを見て、普段無口なお医者様がおー、と小さく鳴いた。

これまで65㎏前後で1年近く推移してきたのに、ここにきて急な増量である。毎日ランニングをしていても、半日調剤室で立ち仕事をしていても、消費カロリーを上回るカロリーを継続的に摂取していると太るということを人生で初めて実感した。

余談ではあるが、高脂肪食を食べ続けたマウスは脂肪が沈着した老化グリア細胞が脳にたまって、神経新生が抑制されて、不安行動が増えるという話を聞いたことがある。*3

鳴き終えたお医者様が次に私に放った言葉は「今後歳とるにつれて代謝悪くなっていくからね、生活習慣病気を付けないとね」であった。心底軽蔑していた自己管理能力の低いおっさんに片足を突っ込んだ、とここで思い知ることとなった。28、9で「私なんかおばさんだよ」と自称するドクターに一ミリでも共感しなくてはならなくなる日が今日だとは思ってもいなかった。

診察室を後にして、心ここにあらずのまま会計の列に並ぶ私は、年甲斐もなく膝小僧を露出したバスケットパンツを履いていた。

 

※頭の中で流れていた曲

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