背伸びしてねん挫した話

※タイマーがないですが大体40分でブログを書いています。

 

カラオケで高得点をとるような上手な歌い方をする感じが苦手で、カラオケが上手な人を見るとちょっと引いてしまうことがある。

 

地元のスナックで、偶然かつて高校で知り合った私の友人(通称:しょうちゃん)と同じ中学の頃付き合っていたという女性店員に会い、彼女と私が出来る唯一の共通の話題である「しょうちゃん」を展開させて少しだけ意気投合したことがあった。私は私の知っている高校生のしょうちゃんを、彼女は彼女の知る中学生のしょうしゃんを語り、お互いに「え~、しょうちゃんそんなキャラだったんだ」と意外がったり、「やっぱしょうちゃんのそこは変わらないんだね」と共感めいたリアクションをしてみたりしていた。お互いのしょうちゃんを出し合うことで共通のしょうちゃん像を再構築してそれを愛で合う過程は、どこか心地よい感じがして、その女性に惹かれかけている感じもありつつ、話題の中心となっているしょうちゃんは彼女のかつて好きだった男であり、それがいい具合のスパイスとなって精神的に痛気持ちいい感じがクセになって、私はずっと話題をしょうちゃんから逸らさないというある種のプレイを楽しんでいた。

酒も進んでいたので私は尿意を催して一度トイレに立ったこ。これによってしょうちゃんの話題は中断されてしまい、帰ってきたときにスナックの女性はカラオケでもしないかと提案してきた。脈絡のない感じでの切り出し方だったので、しょうちゃんの話をし過ぎたかしらと反省して、内心そんなに乗り気ではなかったがその提案を承諾して、私は曲を考え始めた。持ち歌が無い私はそこで即決できず、じれた女性店員の方が先に歌うと言い出して、歌っている間に曲を決めておくことを命じられた。

 

そのときにスナックの女性が歌ったのがJUJUの「この夜を止めてよ」*1であった。

先ほどまで喋っていたその声とはギアを変えた声で、スナックで働くその店員は急にJUJUになった。そこで何だか酔いが急激に冷めて、早く帰りたいモードになった。さっきまであんなに楽しくしょうちゃんの話を一緒にしていた人が急にカラオケでマジのJUJUを歌いだしたのをみて、私は引いてしまった。

左から右へと白色化していく文字と普段のJUJUの音源とはちょっと違うカラオケアレンジの音楽に合わせて、歌い慣れたその素ぶりを見て、この人はあの無垢なるしょうちゃんと青春を過ごし終えた後に、こんなへんてこなシステムに馴致されるような日々を送ってきたのかと思うと、後味の悪い映画を見た後のような感覚になってきて、吐きそうにすらなっていた。

余談ではあるが、酒で吐き気が出てくるのは泥酔で意識がはっきりしなくなりまともに立てなくなる一歩手前くらいの状態である*2らしいが、私はこの後一人で歩いて帰って、途中ストレスでラーメンと餃子をしこたま食い散らかした*3こともちゃんと覚えている。

散々お金も取られたし、しょうちゃんも汚された感じがするし、勢い余ってそれ以来素人カラオケ番組の宣伝を見るだけで嫌な気分になるようになった。

 

今仲良くしている薬学部同期の無垢なる少年が、最近恋に関する話をしてくれた際に、そんなことを思い出していた。

 

(夜の街に関する話なので一応断っておくが、成人してからの話で、かつ、2019年以前の話である。)