読書感想文「あんな「お客(クソヤロー)」も神様なんすか?」を読んで

「お客様は神様」を盾に横柄な態度をとる人類は一定数いて、「日本人は礼儀を重んじる」というステレオタイプが嘘であるのでは、という疑念は接客業のアルバイト経験のある方なら多少なりとも感じたことがあるものかと思う。

この本の副題に「「クレーマーに潰される!」と思ったときに読む本」とあるように、お客様からのクレームをうまく対処するための本であり、近々始まる薬局での実習を見据えて読んでみようと思った。

 

構成としては、著者が住宅営業マン時代に受けたクレームの内容とそれをどう解決したかということに関する具体的なエピソードが集められている第一章、そのクレームをどう受け取って自分の中で処理をして活かす方向にもっていくかという考え方の部分が中心の第二章、そのクレームを活かす具体例として著者が行った「過去のクレームをお客様に伝える」という方法の詳細が書いてある三章という感じになっていた。

あとがきも含めて全230ページの本であるが、第一章の部分に160ページほど使われており、二章はよく聞くような内容だったし、三章は著者だからうまくいった感が否めない。従って、第一章のエピソードの部分を通してこういうクレーマーがいるのかという部分が一番よく記憶に残っている。

 

中でも自分もそのクレーマーに加担しかねないと感じた部分が入れ知恵をするセミプロが裏にいるタイプのクレーマーである。

私はなまじ大学で薬学をかじったばっかりに親族の食生活に口を出したり、使っている薬の副作用について(医者があえて説明していないか、親が話を聞いてないかわからないが)余計な数字を教えたりしているので、ストーリー中に出てくる深くは分かってないくせにプロの円滑な業務を邪魔するようなケチをつけるセミプロの方の立場に感情移入して読んでいた。

そうは言ってもプロだって全員がまっとうであるとは限らないと少ない経験上思っている節がある私としては、口を出したくなるセミプロ側の心もわからないでもない気がしていて、ケチをつける意味を理解していないクレーマーに入れ知恵をするのではなく、このセミプロがキチンと勉強したうえで、プロに「質問させていただく」というスタンスの元直接話せば、建設的なやり取りができたんじゃないかなどと思って読んでいた。

現実的には、セミプロにもクレーマーと別の生活があり、直接プロと喋ったり、クレーマーの現状について詳しく勉強する時間を取れないという事情があって、それでもセミプロの未熟なセンサーに引っかかってしまうものをどうしても身内に伝えたいという衝動もあって、時間は割けないが口は出したいという両方を無理に両立させようとする結果、入れ知恵という形でよく分かっていないクレーマーにクレームをさせるという形をとらざるを得なかったのではないかと想像すると、私は生半可なクセに入れ知恵をしていることに対する反省の気持ちが沸いて非常にページをめくる手が重かった。

また、セミプロかネットに入れ知恵されて、そんなことはプロの立場から見れば既に考慮済みの浅い指摘でクレームを入れてくる人というのは、薬局という場においては一番想像しやすいクレーマー像であったことから、クレームを(これから)受ける側としての立場でも読むことができて、その対応の過程を見て「なるほど」と終始うなりながら読んでいた。

 

タイトルからクレーマーとはいえ客をクソヤロー呼ばわりして悪口をいっぱい書いてある感じの本かと思い、それを期待して手に取った本でもあったが、終始口語でのお客様は神様でいらっしゃる調の接客文体で、内容も結局クレームが生じてしまうのは一定はこちら(プロ側)にも責任があるものとしていて、ある種期待はずれな内容ではあったが、実習の前に読んでおいてよかったと思える本ではあった。

 

※今回読んだ本

www.kobunsha.com